(ふれあいねっと2002年6月号掲載 中村真理子さん:全日本空輸潟vロダクト開発部)

 「ご高齢の方にも、お体が不自由な方にも、もっと航空機の旅を楽しんでいただくために、私たちができることは何だろうか?」サービスフロントで働く社員の、こんな問題意識をきっかけに、「うらしま太郎」を取り入れた「高齢者サービスセミナー」を始めて2年が経ちました。
 当社が行った「うらしま太郎」体験の特徴は、日常生活の場面設定に加えて、航空機をご利用になるお客様の視点に立って、体験の場面を設定したことです。
 各回ごとに「空港編」と「機内編」の場面設定をし、空港編は羽田および伊丹空港を、機内編は機内の模型がある当社訓練センターを会場としました。
 空港編では、お客様が実際に空港に到着されてから手続きを行うまでを想定して、発着案内ボードで時刻や搭乗口の表示がよくわかるか、空港アナウンスがどの程度聞こえにくいか、また、搭乗手続きのカウンターの高さに不都合はないか、自動機器類の表示が見にくくないか、空港内の車椅子用トイレがうまく使用できるか、などを確認しました。
 機内編では、模型の機内で通路を歩き、座席に座ってベルトをしたり、座席上の手荷物入れに物を入れたり、スチュワーデスから配られる飲みものをとって飲んだり、機内VTRを見たり、という体験しました。

 体験の後、話し合いをもちました。代表的な意見は、次のとおりです。

 ・高い音が聞こえにくくなるので、多少低い声で、ゆっくりと話をすると安心感をもっていただけると思う。
 ・腕が上がりにくくなるので、手荷物を上げる際などは、積極的にお手伝いするべき。
 ・色の違いがわかりにくくなるので、機内で何種類かの飲み物を配る場合も、「これは×××でございます。」と一言添えていきたい。
 ・指先の自由がきかなくなるため、お金を出したり、機器を操作したりといった動作全てがゆっくりになってしまうことがわかったので、そこを考慮して見守ることが大切である。

 また、参加者ほぼ全員が語っていたのが、「見えにくい、聞こえにくいことによる周囲からの疎外感・孤立感を感じた」ことです。これに対しては、係員の積極的な「お声かけ」や「お手伝い」が、お客様の安心感につながる、という意見があった反面、あまりお手伝いしすぎると、「また他人様に迷惑をかけてしまったという情けなさを感じた」という意見もあり、「お客様の立場に立ったサービス」のむずかしさを改めて認識しました。
 このような実体験を中心としたプログラムは、参加者にもかなりインパクトがあり、またWACのインストラクターの方々の適切かつ具体的なアドバイスにも大いに啓発されたようで、参加者全員から高い評価を得たセミナーとなりました。


機内では手荷物の収納にもひと苦労 搭乗案内の掲示板は、高齢者には非常に見にくい